私が使っている墨は栄寿堂製 の油煙墨「玄香」という墨です。
学生の頃、初めての授業で必要な道具を揃えるために渋谷のウエマツさんにいきました。
日本画というものを全く知らない状態でリストを見ながら道具を揃え、
ハリーポッターの入学準備のようでワクワクしたのを覚えています。
なぜか心惹かれて、この「玄香」を選びました。香りも好きで、発色が柔くて二十年以上愛用しています。
骨描きの授業の際、井上たえこ先生が私の席に来て下さった時「この墨すごく香高い墨ですよ。指でも擦れるのよ、」と、
お皿に柔らかく優しく擦って下さったのを今でも覚えています。
卒業後、
そういえばあの墨を追加で買っておこうとウエマツさんで聞いたら「ああ、前にあったわね、もう作られてないよ」と製造中止を知ったのでした。
ちょうどみんながお世話になったであろう三千本膠が製造中止に!と日本画界隈に激震が走ったのもその頃だったと思います。
愛おしいものがなくなってしまう。そんな危機感を持ち始めたのは、この墨や膠がきっかけでした
調べると2005年くらいには三重県鈴鹿市にあった製墨所は廃業になったそうで、卒業する前にはなくなっていたようです。
良い職人さんがいらっしゃったそうで・・・知らずに使っていたし、
こうやって職人さんの手で作られるものがなくなっていくのは本当に寂しいことです。
私は画狂老人になるのが夢で!!!
今ある分で足りるかな・・・と
使い終わってしまったらどうしよう・・・・と時々探していたら
なんと出品している方がいて!
購入させていただきました。ありがたい。。。。!

左、中央の2個が学生時代に購入したもの(消費税5パーセント!)
右が譲っていただいたもの。消費税がない頃のもののようで驚愕。
墨は古いものの方が、膠の水分が乾燥して熟成されて良いと言われています。
こんな貴重なものを良心的お値段で譲っていただき、しかも手元にある在庫も譲ってくださるということで
心ある対応をしていただきました。
「価値のわかる方にお譲りできて嬉しい」と言っていただけて、涙が出てしまいました。
画家としての覚悟をしてから、
こうやってどんどん背中を押していただいているような事が起こります。ありがたい事です。
「墨は強靭で、何千年でも残るんですよ」これも井上先生のお言葉。
この美しい墨で描いた絵を長く残せるよう頑張っていきたいと思います。
